至高の料理を生み出す、長崎の料理人たち [1er cru / Hydrangea / 折衷 笹ゆり]
つまり、思考の軌跡を知ってから行く、グルメ旅は別格です。
深田伸治さんが一人で全てを取り仕切る「プルミエ・クリュ (1er cru)」。入り口でチャイムを鳴らすと、シェフ自らが扉を開き迎え入れてくれる。店内は県産の木材でシンプルに仕上げた、決して広くはない空間。だからこそ訪れる人は日常とは少し違う時間の流れ、そして独創的な料理と繊細な仕事をじっくりと堪能できる、ミシュラン一つ星レストランである。深田さんは、設計士からシェフに転身した異色の経歴の持ち主だ。地元神戸で起きた阪神淡路大震災で形あるもののはかなさ、建物が凶器に変わる恐怖を痛感し、建築業から離れることを決意。生活の糧を探す中で料理に喜びを見出した。「自宅にたむろする友人たちに、あり合わせでご飯を振る舞っていたんです。彼らがおいしいと言って食べてくれている姿が私の原体験になっています」。その後本格的に料理の道に進み、2002年、27歳で自らの店を構えた。
TEL.095-829-1061
長崎市鍛冶屋町6-28-1F
定休日 日曜、ほか不定休あり
駐車場 あり
予約 電話は1日前まで、外部予約サイトは2日前までに要予約。18時、19時、20時で受け付け
長崎の玄関口のレストランに、世界の舞台で認められたシェフがいる。長崎駅に隣接する「ホテルニュー長崎」内にある「ハイドレンジャ」で料理長を務める鈴木智宏さんだ。2023年1月、フランスで開催された「第72回プロスペール・モンタニエ国際料理コンクール」に日本代表として参加し、見事にグランプリを獲得した。コンクールでは、与えられた課題に沿ったメニューを披露。料理の出来栄えだけではなく調理工程も審査されるため、事前に何度もシミュレーションを行った。コンクールとレストランの料理は全く別物としながら「一方で調理技術は付け焼き刃ではなく、普段の仕事の延長上にあるもの」と鈴木さんは語る。
輝かしい賞は鈴木さんにとってゴールではなく、あくまで料理人として成長する過程の一つに過ぎない。その証拠に「トロフィーに名前が刻まれるのは嬉しいですけど、私としては全然、危機感の方がすごいですよ」と真顔で話す。「コンクールに出たからこそ、色々な人と出会うきっかけになりました。そうした方たちはチームをまとめる力も優れています」。技術を高めながら、細部まで根拠のある料理を追い求める。「付け合わせの野菜一つとっても、驚きや気づきを与えられるような工夫を積み重ねていきたいです」。長崎から見据えているのは、料理界のさらなる高みだ。
Hydrangea
TEL.095-828-7226
長崎市大黒町14-5(ホテルニュー長崎)
営業時間 ランチ11:30~14:30(os14:00)/ディナー17:00~21:00(os20:00)
定休日 無休
駐車場 あり
長崎市油屋町のビルの2階。隠れ家的な雰囲気の「笹ゆり」は、店主・山川博行さんが存分に腕を振るう和のコースが堪能できるお店。季節や仕入れ状況で替わる目にも美しい料理に使われるのは、全国から仕入れたとびきりおいしい食材だ。岩手県産の白金豚、北海道産のイクラ、高知県産のカツオなど、長崎では滅多に食べられないものも。「仕入れのルートはほとんど自分で開拓しました。生産者を直接尋ねることも珍しくありません。あとは仲買さんとは長い付き合いなので、信頼してその時期その日の本当に良い食材を送ってもらっています」と山川さんは語る。
お金をいただいてきちんとした料理を出す上で、ベストな道具、ベストな素材を選ぶのは当たり前。もちろん使いこなす努力も必要で、それも料理人の腕の見せ所となる。一方で「最終的には、お客さんに対する気持ち、正直な仕事との向き合い方の部分じゃないですか」とのこと。一貫して見据えているゴールはシンプル。おいしい料理だ。県内産だから、県外産だからと限定するのではなく、妥協なくおいしい食材を使うことが正しいお店の在り方だと、山川さんは信じている。ちなみに店名の由来は、花の笹百合。「うちもそんな凛としたお店になりたくて」と話しながらカウンターで魚を捌く姿を眺めていると、まさにぴったりの名前だと感じた。
TEL.050-5493-2357
長崎市油屋町1-6 植田ビル
営業時間 18:00〜24:00(要予約)
定休日 日曜
駐車場 なし
- THEナガサキ飯、な特集
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